導入事例

データの達人:株式会社バンダイナムコネクサス様

2023-09-07 | 発行元 Statista Japan

事業戦略立案の第一歩!データストラテジストが語るゼロからの仮説設計

活用事例:BNX様 画像2

去る2022年7月6日(水)に、 統計プラットフォーム「Statista」をご利用いただいている株式会社バンダイナムコネクサス データ戦略部 データストラテジスト 有井 佳祐様をゲストとしてお迎えし、スタティスタ・ジャパンのカントリーマネージャー 津乗 学とパネルディスカッション形式でセミナーを実施いたしました。

今回のセミナーでは、「【データの達人セミナー】事業戦略立案の第一歩!データストラテジストが語るゼロからの仮説設計」と題して、意思決定における有効なデータ活用について事例とともにお話を伺いました。

本記事では、バンダイナムコネクサス社における戦略立案のための取り組みや、普段の業務でどのようにStatistaをご活用いただいているか、実際にStatistaのMarket Outlooks(主要業界のこれからを展望するマーケット予測ツール)の機能で業界のトレンドを追い、グローバルコンシューマーサーベイ(世界56の国と地域を対象に行った消費者動向を把握するためのアンケート結果を抽出できるツール)で仮説を検証する方法をご紹介いたします。

成長と変化の著しいゲーム業界でのバンダイナムコネクサス社のミッションとは?

日本を代表する産業の一つであるゲーム業界。2021年時点、国内で2兆円超、グローバルでは約17兆円超の市場規模。​2026年にはグローバルで約27兆円を超える規模が予測されている。一層の成長に期待が高まり、日本でも積極的な海外展開を行う企業が増加し、成長と変化の著しいゲーム業界の中でもリーディングカンパニーであるバンダイナムコグループを支えるバンダイナムコネクサス社のミッションとは?

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有井:
変化が著しい業界の中で我々バンダイナムコネクサスは、IP(ゲームタイトルやキャラクター)を軸に様々なエンターテインメントや商品を組み合わせ、創意⼯夫によって新しい価値を⽣み出し続ける、ということをミッションに掲げています。また我々のビジョンとしては世界で最も多彩な顧客接点、ゲームだけではなく玩具やその他さまざまなタッチポイントのハブになれるような企業を目指しています。

具体的には、IPファン向け情報発信の機能開発・運営「Fangage(ファンゲージ)」、事業単体/横断データ分析、商品連動を可能にしたブラウザゲームプラットフォーム「enza」の3つの領域で多彩な事業を展開しているバンダイナムコグループをトータルに支援をしています。


津乗:
簡単に言うと、グループ内での戦略コンサル兼実行支援に特化した先鋭部隊と言うイメージでしょうか?


有井:
そうですね、私が所属するデータ戦略部では戦略構築の支援、日々のデータ分析をしています。チーム構成で言うと、データ戦略部はプロダクトアナリティクスオフィス、データストラテジーオフィス、データサイエンスオフィスの3つからなり、私は2つ目のデータストラテジーオフィスに在籍しています。

データ分析官と言っても、データストラテジスト、データアナリスト、データサイエンティストなど、さまざまな職種があります。それぞれ求められている役割が異なり、中長期的な事業分析戦略を立案する者、アプリゲームの運営のPDCAサイクルを回すような分析をする者などに分かれています。


津乗:
ありがとうございます。チーム構成の中でデータストラテジーオフィスとデータサイエンスオフィスの役割が少し被っているようにも見受けられるのですが、違いはどのようなものなのでしょうか?


有井:
データサイエンスオフィスはデータサイエンティストが在籍しているチームです。ここが弊社体制の一番の特徴になりますが、戦略・ビジネスに強い人たちと数理面に強い人たちとで役割を分けています。

私はどちらかというと、これまでのキャリアで営業やマーケティングなどビジネスサイドに強みがあったため、事業サイドの仮説設計を一緒にお手伝いしたり、分析の要件定義を実施したりしています。もちろん我々自身もデータ分析をしますが、より高度な技術を利用する分析や経営に全体的に響く分析は、やはり数理面に強いデータサイエンティストの方が長けています。そのため、我々がある程度現場感の強いテーマを分析し、筋の良い仮説を見つけたらこの仮説を検証するより高度な分析をデータサイエンティストにお願いするイメージです。
 

津乗:
なるほど。すごく良いフローですね。データサイエンティストの方が高度な分析を行い、有井さんのような事業部門にいらっしゃった方がデータの活用領域を見極めている、というのが特徴的ですね。有井さんも日々データに囲まれて仕事をされていると思うのですが、その中で最近のプロジェクト例について簡単にお伺いできますか?


有井:
私が直近で携わっているプロジェクトでは、まずは市場規模の推定、例えば新規タイトルをリリースするにあたり、いったいどれくらいそのタイトルの市場規模があるのかを推定し、そのターゲットに対して適切なマーケティングプランの策定、それぞれのKPIがどれくらいあれば採算に合うのかを考えるというビジネスプランの監修をしています。

戦略の定義とデータストラテジストが生まれた背景

津乗:
日々本当に色々な粒度や角度からデータを見ていらっしゃる有井さんですが、まずは戦略立案についていくつかアイデアをお伺いしたいと思います。戦略と言いますと経営戦略、事業戦略、販売戦略・・・など様々な次元で戦略があるかと思います。バンダイナムコネクサス社が「戦略」を一言で定義するとしたら、いかがですか?


有井:
例に挙げていただいたように経営戦略の中でも例えば、ポートフォリオを作るポートフォリオ戦略や、グローバルにニッチを攻めるグローバルニッチ戦略など色々な粒度があると思いますが、そういったフレームに捉われると視野が狭くなってしまいます。そのため、我々は広義な意味で戦略とは「事業及びプロダクトにおける進むべき方針を定めること」と考えています。分析をしてアウトプットが出たとしても、進むべき方針が決まらないのであれば、そもそもやる意味がない、というような議論は社内でもよく行われます。

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津乗:
その中で有井さんのタイトル「データストラテジスト」が御社の中で生まれた背景は何かあったのでしょうか?


有井:
弊社だけではなく、一般的にデータストラテジストという職種は存在していますが、自分の体験も踏まえてお話します。私自身がデータ分析の領域に携わるようになったのは2、3年前で、それまでは事業や商品の担当者でした。その当時私が抱えていた課題感としては、商品の決裁を通すためのエビデンスをデータ分析官に分析を依頼して、色々な指摘をもらっても、分析官の言っていることが理解できず、自分に分析のリテラシーがない、検証の仮説がない、問いの設定が甘いなどのものがありました。


津乗:
なるほど。私自身は外資系企業の日本支社に位置付けされ、売上を達成するための数字に関心が寄りがちで、本来チームで持っている疑問が解決されないまま進んでいるような時もあります。日本支社にはデータストラテジストのポジションがないので、頼りにできる方がいたら嬉しいな、と純粋に思います。


有井:
この職種が生まれた背景ですが、そういった分析を依頼される方々の課題感を紐解くと、データストラテジストという職種で解決できるのでは、という答えにたどり着きました。具体的にデータストラテジストとは、経営戦略に紐づく全体のマーケティングストーリーを描いた上で必要なデータを集めて分析し、しっかり事業担当者・相手のことを考えた戦略戦術を立てられる人、もしくはプロジェクトマネージができる人のことです。特に後半の、相手の目線に立って考えて動けるかどうか、というところが一番重要だと思っています。


津乗:
本当ですね。以前勤めていた会社でそれらしい方はいたのですが、どうしてもみんなが共通するゴールに沿った形にデータが使われていない、最後の部分の「課題への強い当事者意識」を持って戦略設計、ということがなかなかされていなかったように感じました。

戦略立案の第一歩、まずはここから

津乗:
戦略立案に関して、どこから始めたらいいのだろうと皆様お悩みかと思います。誰が買わなくなったのか、なぜPVが下がったのか、なぜコンテンツに飽きたのかなど日々感じる疑問がたくさんあると思いますが、ここで大事なことはなんだと思いますか?


有井:
いろいろな考え方があるかなと思いますが、日々ひしひしと感じているのは「愚直に問う」姿勢です。戦略立案やデータ分析において、「こうすればよい」という魔法はありません。自分もデータ分析に携わる前は、分析したら何かできるのではないか、と分析を魔法の言葉のように感じていました。しかし、例えば売上が落ちてしまった商品の売上を回復させる方法を考える際、画一的な手法はなく、案件ごとにロジックを作っていかないと間違いなくうまくいかないと今では強く思っています。我々の取り扱っているプロダクトは、それぞれお客様に訴求している価値が別物だからです。そのロジックを立てるにはどうしたら良いかというと、「愚直に問う」に尽きると思います。 


津乗:
なるほど。とにかく質問・疑問を積み重ねていくことですね。質問の質も大事になるかなと思いますが、まずは量から入って質を高めるのが良いのでしょうか?当然、質を高めるには普段からデータに基づいた疑問を持っているとか、自分の疑問を数値と共に表に出せる、といったことも大事になりそうだと思っていたのですがどうでしょうか?


有井:
おっしゃる通り、質は大事なのですが、質にとらわれすぎて結局議論が進まなくなるというのはよくある話だと思います。私の場合は、まずは質問を徹底的に洗い出し、集約して質を高めていきました。


津乗:
なるほど、そういったプロセスにも面白いものが隠れているかと思いますが、お題をどうしても決めなければいけない時はどのように決められているのでしょうか?


有井:
やはり視点が非常に大事かなと思っています。どこから見るのかによってお題が変わってくるかなと思います。抜け漏れのないお題の設定をするためには、多角的な視点でお題を設定する必要がありますが、その多角的な視点を見るひとつの考え方として、マクロとミクロの視点があるかなと思います。

例えば経営者の方はマクロを見がちで、マーケッターの方はミクロを見がちということがあると思いますが、どちらも大事だと思っています。物事の核にあるインサイトはマクロにもミクロにも現れているはずなので、マクロという意味ではStatistaで使われるようなデータから市場全体を見て、かつユーザーひとりひとりと向き合いミクロの観点を大事にしています。

バンダイナムコネクサス社流 Statista活用方法

津乗:
それでは、ここからはいよいよStatistaを使った戦略立案のプロセス実践編として、普段有井さんがどのようにStatistaをご利用いただいているかをお見せいただきたいと思います。



有井:
まずはStatistaのプラットフォーム上のMarket Outlooks(主要業界のこれからを展望するマーケット予測ツール)のページからVideo Gamesのマーケットを見ます。ここでは、Revenueはどんどん伸びていきそうなんだな、単価では2022年ではモバイルゲームが高く1ユーザーあたり年間64ドルだが、逆にダウンロードゲームは単価が低いんだな、といった具合で、最初はざっくりと概要を掴みます。

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その後、自分の身近なマーケットである日本に絞り、同様にデータを見ます。例えば日本のユーザーの年間の単価は419ドルあり、グローバルアベレージと比べても相当高いということがわかります。このことから日本市場は世界から見て独特の傾向がある、というマーケットのトレンドを把握します。

例えば、日本とアメリカを相対比較してみると、市場としてはアメリカの方が大きいですが、人口が多いので当たり前ですよね。一方で、ユーザー数は日本の方が少ないながらも、単価で見ると日本の方が高く、おそらく日本のゲーム市場はコアユーザーが単価を引き上げている市場なのだろうな、ということが見えてきます。



津乗:
このページを見ているだけでもいろいろなデータに触れることができますよね。戦略のお題が来てから始めるのではなくて、常日頃からデータに触れて日々感度を高めることは有井さんもされていますか?


有井:
そうですね、ビデオゲームに限らず日々のドメイン知識と呼ばれるゲーム業界での市場のトレンドや、他社の新しいゲームのリリース情報などはそれぞれで情報収集しています。

あとは、グローバルコンシューマーサーベイ(世界56の国と地域を対象に行った消費者動向を把握するための調査結果を抽出できるツール)も、私は週に1度は見ています。例えば先ほどOutlooksで日本の1ゲームユーザーの単価は高いが、ユーザー数が少ないということが分かりましたが、それでは各国のゲームユーザーはどんなジャンルのゲームをやっているか、というのが気になりますよね。そこで好きなゲームジャンルについての消費者調査を例えばカナダで、コロナ前後で好きなジャンルが変わったのかどうかを調べてみます。

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2019年〜2022年までを比較すると好きなジャンル自体の変化はなさそう、ということがわかり、ここで一つ仮説が外れたことが分かります。このように仮説をGCS上で検証する、ということを日々実践しています。



津乗:
GCSは、ゼロから仮説を立てることも、ずっと持っていた仮説の検証も、どなたでも手軽に実践できるツールだと私も思っています。

戦略立案で大事なこと

有井:
本日伝えたことをまとめますと、一つ目はそもそも何故データ分析をするのか、ということをしっかりと考えることが大事だと思います。ビジネス上の意思決定を支援する、ということがビジネスにおけるデータ分析の重要な視点だと思うので、どのような意思決定を支援すべきなのか、というところはよくよく考える必要があると思います。

二つ目は、その点を抑えた上でいろいろと方法を模索すると思いますが、魔法のような手法はないので、その問いや課題に思考を深めた人が良い仮説を立てられる、ということです。分析のスキルがあまりなくても、本当に愚直に考えた人がやはり核心に迫るような大きな一言を放つことが多いように感じます。というのは、思考を深めることと当事者意識を持つということはニアリーイコールなので、統計学が得意だとか、RやPythonなどの言語ができる・できないに捉われず、そのプロジェクトの当事者意識を持って、課題の解決に取り組むことが戦略立案の重要なポイントだと思います。

今後のデータ戦略部の目標と展望は?

有井:
我々はバンダイナムコグループの一員ですので、やはりグループ全体の未来を創っていく、ということにしっかり携わっていきたいなと思っています。社内でいろいろと分析の勝ちパターンも見えてきましたし、IPを軸とした様々な事業領域へもっと展開していきたい、と考えています。

登壇者プロフィール

有井 佳祐
・会社:株式会社バンダイナムコネクサス
・部署/役職:データ戦略部 データストラテジスト
・略歴:
ヤマハ株式会社にて、シンガポール駐在や東南アジアの戦略策定を経験した後、自身がリーダーを務める新規事業プロジェクトで予算1000万円獲得し事業企画/開発を推進。その後、データサイエンス系スタートアップでデータアナリストに従事したのち、現在の株式会社バンダイナムコネクサスに入社。
新規事業/商品の企画時における定性・定量を掛け合わせた調査を得意としており、バンダイナムコでは開発/運営チームの一員として家庭用新規ゲームタイトルの立ち上げに分析を通じ貢献。


津乗 学
・会社:スタティスタ・ジャパン株式会社
・部署/役職:カントリーマネージャー
・略歴:
2019年11月、Statista日本オフィス開設に伴いカントリーマネージャーに就任。それ以前は外資メーカーやITベンダーにて IoT x デジタルをテーマにソリューション開発に従事。デザイナーやスクール講師といった経歴も持つ。現在、iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。毎週木曜「J-WAVE TOKYO MORNING RADIO」出演中。


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水野 希更

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